
障害者支援施設 天北厚生園 社会福祉法人南宗谷福祉会 常務理事 障害者支援施設天北厚生園 施設長 岡崎 博康さん
障がいのある人が
地域で幸せに暮らしていくために
町立としてスタートした知的障がい者施設
障害者支援施設天北厚生園の歴史は古く、1973年、廃校となった兵安小学校の校舎の一部を利用して、町立の知的障がい者の施設としてスタートしました。当時の定員は60名。1991年には、障がいが重度な利用者のための重度棟を増設、定員90名の大きな施設となりました。
その後2007年、障がい者を取り巻く法制度改正への対応、また、より質が高く効率的な福祉サービスの提供を目指して、中頓別町から社会福祉法人南宗谷福祉会へ運営が移管されました。障がいのある人たちと触れ合い支援する仕事に魅力を感じた岡崎施設長を始め、20名ほどの町職員が同法人に籍を移し、理想と信念のもと障がいのある人たちの支援にあたっています。

さまざまな支援施設を開設し総合的な支援へ
2008年ごろから、障がいのある人が地域の中で暮らせるようにというのが国の方針の主流になりました。これに伴い同法人では、廃校となった中頓別農業高校の職員住宅などを利用してグループホームを開設します。2012年までに「ふれあいホーム」3棟ができ、一定程度自立して生活ができる利用者は職員の支援のもと、こちらで暮らすようになりました。
2012年には知的障がい者、精神障がい者、身体障がい者を同じ施設で支援しようという国の方針に合わせ、新体系の事業に移行することになります。そして、天北厚生園は現在の地、上駒地区のかつての農業高校に隣接する学生寮跡地に移転。学生寮であったため、身体障がい者の入所はなかなか難しいところがありましたが、適切な改修を施しました。2021年4月には、利用者に十分配慮された新しいグループホームも加わり、厚生園に38名、グループホームには合計20名の利用者が暮らしています(2025年1月現在)。
また、利用者が働くことに慣れてもらうため、2011年に多機能型事業所DOを開設しました。農業高校跡地には畑や農業実験室、農産物の加工施設などがたくさん残っていたため、これらを活用して野菜や苗を利用者が育て収穫。また、利用者が販売まで行うことで、活躍する場を創出しています。2014年には、地域の障がい者の相談窓口として、相談支援事業所すまいるを開設。そうして、支援態勢の拡充に取り組んでいます。

まず必要なのは、資格よりマンパワー
同法人が支援している利用者は、北海道の各地から訪れています。比較的重度の障がいの方が多いのが特徴です。「人にランクをつけるのは非常によくないことですが」と岡崎施設長は前置きしたうえで、障がいの程度が1~6数字が大きいほど重いというなか、天北厚生園の利用者の平均は5.5。言葉でコミュニケーションを取りにくい人も多くいます。また、高齢化が進んでいて、厚生園で平均55歳、グループホームで平均62歳。
これだけの多岐にわたる支援施設、障がいの重い利用者を、2025年現在、職員46名、委託4名で支えています。小さな町ということもあり、慢性的な人手不足は避けられない問題です。介護福祉士、生活支援員、管理栄養士や調理員、さまざまな分野で人を必要としています。
障がい者支援の仕事となると、専門知識や資格が必要かなと思う人も多いかもしれませんが、「少しでも、障がい者の手助けをしたいと思ってくれる方なら、誰でも歓迎します。人と関わるのが好きな方なら向いていると思います」と岡崎施設長は話します。働いて実践を積みながら勉強をし、資格を取得することも可能です。また、研修受講費用を一部助成する制度や、資格取得した場合は資格奨励金も支給されます。実際、働きながら資格を取る人がほどんどです。

障がいを理解し、町民とともに温かく支える人を
「障がいって、持ちたくて持つ人はいませんよね。外国に行けば、自分も同じ状況になり得ます。言いたいことが通じない、相手の言葉もわからない、お金も数えられない、そうして困っている、まさしくそれが障がい者の方なんです。」岡崎施設長は、理解しようとする気持ちが大切であると話します。町職員として厚生園の利用者の方々と関わって以来、その思いはずっと変わっていません。
かつては町のイベントに出店したり、施設のイベントに町民を招くなど、利用者と地域の人たちとの交流を図ってきました。しかし、職員の不足、利用者の高齢化などで、近年はなかなか難しくなっているのが現状です。
2021年4月に開設された新しいグループホームは、2階は住まい、1階は多機能型事業所DO直売所「よってね」で構成されており、多機能型事業所DOで栽培された原木しいたけや、旬の新鮮な野菜、利用者の手芸作品などが販売されています。ゆったりとしたカフェコーナーでは、コーヒーやソフトドリンクを楽しむことができたり、不定期ですが週に1日か2日ほど、たいやきの実演販売を行っています。
この直売所「よってね」は、まさにその名の通り、地域の人たちが気軽に立ち寄り、利用者と交流することも大きな目的のひとつとして開設されました。新型コロナウイルスが5類に以降した今、地域交流の場となるような催しの企画を検討しています。
利用者には様々な障がいがあるため、信頼関係を結ぶことは一朝一夕にはできません。利用者への日々のサポートを積み重ねていくことでようやく信頼関係を築くことができます。それは容易なことではありませんが、利用者と意思疎通できた時の達成感や嬉しさは他にはない魅力です。利用者と触れ合う楽しさを感じながら、地域にとってなくてはならない大切な仕事を一緒に支えませんか。