細谷建設 株式会社 代表取締役社長 細谷 武昭さん

町とともに社会をつくって86年
これからの100年につなげる人材を

土木工事や道路管理で暮らしを支える

 細谷建設の創業は昭和10年3月。中頓別で85年以上土木工事業を営んでいます。現社長細谷武昭氏は3代目にあたります。
 業務は公共工事を中心とした一般土木工事から森林土木、農業土木、建築事業など多岐にわたり、最近は道路等維持管理のウエートも高くなりました。中頓別町内のスクールバスの運行も、同社が行っています。創業者である先々代の、「社会をつくる」という精神を受け継ぎながら、その時代時代で必要な基盤整備をしインフラ整備をすることで社会資本を作り上げ、中頓別町の産業を支えてきました。まさに町とともに歩んできた会社です。細谷社長は「住民サービスを維持するという面でも、常に町のために役に立ちたいという思いで仕事をしています。もちろん雇用も含めてです。そしてもしも災害が起きたときには、全力を上げて協力したいと思います」と話します。
 道路等維持管理については、北海道の委託を受け、冬期は道道の除排雪、夏期は道路・河川・海岸の維持管理業務を行っています。道路等維持管理では、週に3日のパトロールを欠かさず、障害物やごみの除去、車とぶつかって死んでしまった野生動物の処理など、また、道路や河川の築堤などの除草作業も行っています。私たちが一年中安心して道路を走ることができるのも、こうした日々の管理のおかげです。同社は、近隣町で道路等維持管理を行っている6~7社からなる南宗谷道路環境事業協同組合の事務局を担っています。

無駄な人、無駄な仕事は存在しない

 この業界でも人材不足は深刻。細谷社長は、受注した仕事を下請けに出すことはせず、責任をもってやり遂げることを使命としています。それは先々代、先代が当たり前に守ってきたことでした。けれど、このまま人材不足が続けば、それが難しくなる日が来るかもしれないと危惧します。
 大型ダンプや除雪トラック、建設機械を運転するような有資格者はもちろん必要ですが、それ以外にも仕事はいくらでもあり、できる仕事をこなしてもらい通年雇用につなげています。「人はいろいろバラエティに富んでいるけれど、その人に合った仕事というものは必ずあるはず」と細谷社長は言います。もちろんマルチでできる人もいるけれど、「草刈りしかできない」「ごみ拾いならできる」「パトロールなら」という人も、上手に工夫してはめ込めばマンパワーになります。
 「無駄な人はいないと思う」そして「不要な人がいないのと同様、不要な仕事はない」というのが細谷社長の信条です。
同社では高齢だから女性だからと思い込みだけで仕事を制限することはなく、事務職の女性でもどんどんパトロールに出ています。気分転換にもなるし、女性ならではの仕事の丁寧さもあって、思った以上の効果が出ているといいます。そのほか、職種によって季節雇用、短時間、請負などの仕事もあります。現在は職員を工事の現場から融通して草刈りなどの作業をこなしているのが現状ですが、人手が確保できればそういう人に本来の仕事に戻ってもらうことが可能になります。
 会社として、まだまだやりたいことがたくさんあります。「人さえいればなんでもできるね。老若男女にかかわらず、資格のあるなしにかかわらず、この町にも仕事はたくさんある」適性を見極めて「その人に合った場所でいい働き方をしてもらうのが社長の仕事」と細谷社長はいいます。住環境なども整え、町外から働き手を受け入れることも大事な一方、町内から町外へ働きに出ている人、または町内に眠っている人材が町内で働けるようになれたらと考えています。

チームワークでよい仕事を

 「思いやりのある人に来てほしい」と細谷社長。技術や力量があるリーダーシップを発揮する人に会社としては仕事をまかせたいけれど、我を通せば周りとうまくいかなくなり、結果その人や周囲の離職にもつながれば会社にも損失となります。「仕事のできるできないは仕方ない、できるに越したことはないけれど、できない人間を思いやりをもってフォローできるような人を望みます」。
 細谷社長は学生時代を札幌で過ごし、スポーツに熱中してきました。寮で、部活動で、チームワークの大切さ、チームワークがよければ予想以上の力を出せることを実感してきました。寮での規律正しい生活、先輩と後輩の関係、そして苦楽を共にした仲間とのつながりが、今に大きく活きてきていると振り返ります。

町の将来を見据え、人材育成も

 社会保険や各種手当、退職金などの制度も整備され、また社会全体が完全週休二日制の導入に向けて進んでいる中、同社でも時代の流れに準じるよう、注意を払っています。資格の取得も支援するという、頼もしい言葉も。高校生には卒業後いったん入社してから学校に通うことも支援し、そのほかでも、入社してから大型トラックや大型特殊の運転免許など必要な資格をとるのであれば、資金面でも援助しています。「若い人だけでなく、40代くらいの人であっても、積極的に資格を取得してほしい。資格っていうのは、会社のためでもあるけれど、最終的には自分のためのものだから」。  近隣では除排雪トラックのオペレーターがもう地元では調達できなくなってきているといいます。10年先20年先を見越して、今から地元で人材育成をしていくことの必要性を、細谷社長はひしひしと感じています。昨年旭川に開校した、道立北の森づくり専門学院など、「うちで仕事したいっていうなら、資金的にほかからの支援もあるならば、本当はあのような学校に送り出したい。僕が若かったら通いたいくらい」。

 同社では、中頓別の美しい自然を守り、豊かな環境をつくろうと、町教育委員会と連携し、中頓別小学校の子どもたちと一緒に、社会教育施設に桜を植樹する活動を10年以上続けています。10年後20年後、町の春が桜でいっぱいになる日を、子どもたちとともに思い描きながら小さな苗木を植えています。こんなふうに、ハード面でもソフト面でも、次世代、その次の世代の中頓別町を見据えて地域社会とともに歩む、すてきな会社です。