稚内信用金庫 中頓別支店 支店長 今野 貴之さん

地域に寄り添う金融機関
地元とともに繁栄を

宗谷・留萌管内の預金シェアは8割

 稚内信用金庫は稚内に本店を持ち、宗谷管内、留萌管内北部を中心に、札幌、旭川を含め全24店舗を持つ金融機関。営業エリアがかなり広いのも特徴のひとつです。札幌・旭川の店舗は、宗谷・留萌管内から両市へ仕事であるいはリタイアして移り住んだ人たちの中に、長年なじみのある「稚内しんきん」と継続してつきあいたいという人が多いために出店しています。
 管内のシェアは預金で8割、融資で5割と非常に高く、自己資本も約511億円、自己資本比率は47%。非常に健全な経営体質で、強固な体力をもつ金融機関です。
 また、地元の文化・経済の発展のためにさまざまな分野での地域貢献活動にも力を入れています。風力発電への融資および出資、道北ドクターヘリのスポンサー、交通安全および金融防犯教室の実施、金融教室の実施、演奏会の開催等々、その活動は多岐にわたります。

町民と一緒に楽しみ、町民に寄り添う職員に

 2019年度から中頓別支店長を務めている今野貴之さんは「金融機関ということで、お金を預かって融資してという仕事がメインに思われがちですが、僕らの仕事の本質は、中頓別の人々が発展し、豊かな生活ができるようになるためにどう力を発揮できるかということだと思います」と話します。そのためには町のいろいろなところに顔を出します。お金以外のことでも相談を受けるし、意見も言い合う。どこの支店に配属になってもそのように地域の人たちとの関係性を培ってきたのだと言います。そして「どこに行っても本当によくしていただきました。そういう経験があって、今この仕事ができています」。
 職員は町の行事にも積極的に参加します。今野支店長も町内行事で有名キャラクターなどを模した衣装をまとって盛り上げたこともありました。「そういうことを負担に思うのでなく、楽しめるような人が向いていると思います」。
 金融機関である以上、厳しい面をもたなくてはならない場面もありますが「そのときも機械的じゃだめなんですよ。普段からお客さんと通じ合っていれば、その方をどうしたらよりいい状態にできるかと真剣に考えます。お客さんと意見が合わないこともありますが、悪い関係になることはありません」。個人情報を預かる責任をしっかりと認識しながら、お金に関してはきちんとし、地域の人たちと一緒になって楽しむときは大いに楽しみ、それをまた普段の仕事に活かしていく。そういう流れを作っていくのが理想的な仕事の仕方なのだと今野支店長は言います。
 2020年度は新型コロナウイルス感染拡大防止のために行事もなくなり、お客さんとの深いコミュニケーションがとれなくなりました。このままでいいのだろうか、何か自分たちにできることはないかという声が、中頓別支店の職員の中からも上がっているそうです。「そういうふうに思うようになってくれていることがうれしいですね。それが信用金庫の職員の在り方だと思います」。
 「稚内信用金庫は地元と共に繁栄します」。後に第4代理事長・会長・最高顧問となった井須孝誠氏が昭和36年に提案したこの「信条」から、今もなお少しもぶれることなく、各店舗の職員一人一人がこの使命を負って日々業務にあたっています。

たくさんの可能性をもつ宗谷地方そして中頓別

 今野支店長は仙台出身。大学進学で北海道に来て、そのまま北海道の人となりました。最初は何も知らなかった宗谷地方のことを、今、こう見ています。「宗谷管内は人口流出がはなはだしく、また日本全国どこの地域とも同様、高齢化が進んでいます。ただ全体でみると、酪農や漁業などにおいて、ほかの地域と差別化できる産業があり、それらの中に6次産業化やブランド化を図っている製品もあります。やろうと思えば、いろいろな価値ある産業がまだまだ掘り起こせる地域であると思います」。なんとかしてさまざまな産業を呼び込み地域を活気づけたい。そのために力を発揮しなくてはならないのが、その地域の金融機関なのだと言います。
 中頓別は雄大な景色も温泉もあり、人々は穏やかで人柄もいい。子育てもしやすく非常に暮らしやすいなど、いろいろな宝があると今野支店長は感じています。「この先10年先、20年先を見据えて町の発展のためにできることがあれば、一生懸命協力していきたい」。

先輩たちが築いた関係をこれからも

 「業績がよくてもそれに甘んじていてはだめ。金銭のやりとりだけならネットでもコンビニでもできます。当金庫はご融資もそうですが、それ以外の部分でも、地域と協力していろいろなことができる組織だと自負しています」。もともと信用金庫は地域の中小企業と住民のための金融機関。長年地元と共にあり、人々の暮らしと寄り添ってきたからこそ、その地に特化した経営のノウハウもたくさんもっています。「地域が発展すれば地元の企業が元気になり、結果的に当金庫も発展します。当金庫は一番最後でもいいんです」。


 住民の高齢化・減少は進み、社会も大きく変化しています。オンライン化やキャッシュレス化も加速しています。「金融機関は間違いなく今後、やることが変わってきます。でも信用金庫としての基本は変わらず、地元の人と一緒に発展しないと生きていけません。新しい時代に新しくやるべきことをきちんと勉強していけばこれからも楽しく仕事をしていけると思います」今野支店長は最後に力強くこう言いました。